ツナヒバ

□古城の孤独なヴァンパイア
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「−−−−。行かないで−−−−!」


声が聞こえる。
綺麗な声が、誰かの名前を叫ぶ。
とても聞き覚えのある声だった。


「愛してるから、死んじゃヤダよ、一人にしないで−−−−。」


この声を知っている。
とても、愛しいと思う。
しかし、誰の声なのかが思い出せない。
誰を呼んでいるかも分からない。
肝心の名前が、聞こえない。


「俺も愛してる。ゴメン恭弥」


あの声の主は恭弥と言うのか。
嗚呼、すごく大切な気がする、でも、思い出せなかった。


「早く逃げろ」

そして、恭弥と囁き、逃げろと言うこの声は多分・・・・・俺。


「いや、嫌ぁぁ!」


悲痛な叫びが聞こえ、静寂が訪れた。








「−−−まで寝てるの、−−−てよ」


上から声が聞こえる


あれ。俺は寝ていたのか。


「・・・!」


目を開けて、いきなり飛びこんできた、綺麗でどこか幼い顔。
一人の少年が、俺の上に跨って顔をのぞきこんでいた。


「やっと起きた。死んだかと思ったよ」

「あ、君はさっきの・・・」


思い出した。
俺が助けを求めてやってきた(悪く言うと侵入した)部屋で眠っていた少年。


「えと・・・俺・・・」

「ねぇ覚えてる?起きたら血を流した貴方がいて、気絶しちゃうんだよ。本当びっくりした。でも何だかほっとけなくて・・・手当したの」


そうだった。
俺は何故か気が付いたらボロボロで、城で出会った少年の前で倒れた。


「君が助けてくれた・・・?」

「・・・うん」


頷いた彼はこちらを覗うような目で見つめる。
それもそうだ、自分よりでかい年上の男が家に侵入してきて、しかも血を流して目の前で倒れる。


・・・普通なら警察を呼ばれる。


「礼を言わないと・・・ありがとう。き、君の家に入ったのは、その・・・カギが掛かってなくて、俺も死にそうでさ・・・とりあえず決して怪しい者では・・・」


なんだこのグダグダな言い訳は。
怪しい者と思われない方がおかしいが。


「ねぇ」

「ん?」

「・・・どこかで・・・会ったことある?」


さっきの謝罪と礼(言い訳)はスルーされたらしい。


「えと・・・ゴメン、今俺・・・記憶が無いんだ」


気が付いた時には血だらけでボロボロで、自分の名前さえ覚えていなかったのだ。

言わば、記憶喪失、だ。

こんなに綺麗な(と少年に言うのもどうだと思うけど)子に会ったことがあるとしても、今の俺には何も分からない。


「記憶が・・・?」


驚いている。
それもそうだろう。いきなり記憶が無い、だなんてそんな事不審者が言ってきたらあやしす・・・


「僕も記憶が無いの」

「え・・・?」


耳を疑った。


「自分の名前とかはちゃんと分かってる。
でも、大切な記憶が・・・抜けてる気がするの。
何でここで寝ていたのかも分からないし・・・」

大変だ。
記憶喪失者が二人揃ってしまった。
しかもこの子は見た所、まだ子供。


「ここには君一人しかいないみたいだけど・・・誰かと住んでいた記憶は?
家族とかのことは覚えてる?」

「ううん・・・」


彼はうつむいてしまった。
ちょっと泣きそうな顔になってる。
こんな気味の悪い城で、知らない男と二人っきりで、記憶が無くて。
この子にとっては・・・泣くしかないよな・・・。
実際俺も泣きたい状況なのだが。


「そっか・・・俺は名前すら覚えてないから言えないけど、君の名前は?」


「雲雀、恭弥」


「!!」


これは、偶然?
さっき夢で聞いた名前と一致してしまった。


「・・・?どうかしたの・・・?」

「あ、いや・・・さっき夢の中で聞いた気がしてね・・・あ、夢の話なんかしてごめんな・・・こんな時に・・・」

「綱、吉・・・」

「へ?」

「僕が覚えてる唯一の名前。起きてから貴方を見た時、なぜかその名前が出てきた」


綱吉。
とても覚えがある。


というか、これは・・・俺の名前?


「沢田綱吉だ・・・」


思い出した。


「俺の名前は、沢田綱吉」

「思い出したの!?」

「そうみたいだ・・・でも、何で君が俺の名前を・・・?」


これも偶然、というのか。


「ねぇ・・・僕たちってやっぱり・・・どこかで会ったことある、のかな?」


関係がない、とも言えないかもしれない
しかし。
二人とも、記憶がない。
何という悲劇なのか。


「何だか僕・・・貴方から離れたくない」

「え、うわっ」


そう言えば彼はベッドに座った俺の足に跨ったままで、ギュウッ、と抱きついてきた。
漆黒の髪に覆われた丸い頭を胸にすりつけている。

何だかこの子の行動はいちいち可愛いと言うか、無防備というか・・・とりあえず心臓に悪いな。

でもちっとも嫌ではなかった。
むしろ、心地良い。
この温もりが、なぜか酷く、懐かしく感じる。


「なんでだろう・・・すっごく落ち着く・・・ねぇ、もうちょっとこうしていて良い?」


さっき泣きそうだったからなのか
うるうるした目で、しかも上目使いで言われて断れる訳がない。


「俺でよければ・・・俺も何か落ち着くし・・・」


そっと、彼に腕を回してみる。
その体は、驚くほどに華奢だった。
何も食べていないんじゃないだろうかと心配してしまうほどに。


「君・・・あのさ、」

「恭弥で良いよ?」

「恭、弥。お腹とか、すいてない?」

「っ、なん、で?」

「いや、その・・・すごく君・・・細いから」


少し心配だったのだ。
記憶が無いと言う事は、昨日まで何をしていたか覚えてないということ。
つまり、もし食料をこの子が与えられていなかったらと言うことも(例えば虐待とか)分からない訳で。

彼が少し戸惑った反応を見せたので、ますます心配になる。


「お腹は、空いてない」

「そっか」

「でも、喉が渇いた」

「じゃあ、ここに何か飲むものあるかな・・・」


傷の痛みもあまり感じなかったから恭弥を離して立ち上がろうと思った、でも何故か離れてくれない。


「恭弥・・・?」

「あのね、聞いて綱吉」



僕、貴方にまだ隠してることがある−−−−





to be contenew......





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とうとう来ました第4話!!
待っていてくださった方(いるの?←)遅くなり申し訳ないです・・・。

いやぁ二人とも記憶喪失だなんてどういう設定だよ!って感じですね。

年下ヒバリンが可愛くかけてれば良いんですが・・・

まだまだ続きます・・・!




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